雪組『蒼穹の昴』我思予習必要壮大物語
の余韻も冷めやらぬままに、行ってきました、雪組
グランド・ミュージカル
『蒼穹の昴』
~浅田次郎作「蒼穹の昴」(講談社文庫)より~
脚本・演出/原田 諒
『蒼穹の昴』とは
浅田次郎先生の壮大な小説が原作です。
前回の宙組ハイローは「予習しなくてもいいです」と書いたのですが…
予習しといたほうがいいです!!
私もこの公演が決まった時に、ブッ〇オフで文庫版5冊を見かけ、買おうか迷っていたのですが、もうなんなら1巻だけでも読めばよかったと後悔しています。
ちなみに…浅田次郎先生の原作が今までに宝塚で舞台化されたのは2作品。
『王妃の館』
『壬生義士伝』
↑これは舞台化されたBlu-ray/DVDですが、同名の小説も単行本・文庫版ともに出ています!
どちらもそんなに長くなく、なによりもともとパリ好き&幕末好きだし、浅田次郎先生の軽妙な文章ですぐ読めた。なんなら舞台化決定前から読んでいた。舞台化に当たって再読したっつーくらい。
シカシ『蒼穹の昴』は…そもそもテーマが、入りにくかった…。
あ、でもね、『三国志』とか『ラストエンペラー』とか、韓国ドラマ王朝ものとか好きな人は、きっとするする読めますよ!
なぜ予習したほうがよいのか?
それは…登場人物の名前(読み方)がわからない!! 入ってこない!! のです。
実在の有名人物である、
西太后(せいたいごう)とか
李鴻章(り こうしょう)とか
袁世凱(えん せいがい)とかは耳が受け入れるからよいのですけど。
でも、主役の梁文秀がリァン ウェンシウって読めますか?
私は観劇後も「ふみひでさん、ぶんしゅうさん」と言ってしまいます。
中国物で、みんな衣装やメイクが似ているうえ(同じ立場の人は、ほぼ同じ衣装)、「あの人、誰だろう? 役名…聞き取れない!」ってなるので、「雪組なら研1までわかる!」という方以外は、役名だけでも知ってるとよいかもです!
(そもそも雪組大ファンの人は読んでますね、きっと)
さてそれでは、今でも読み方がわからない人が多数ですが、主要陣の感想です。
梁文秀:彩風 咲奈
リァン ウェンシウ(再確認)。
最初はのほほんとした次男坊で、弟分の春児と一緒に「いつかきっとすごいことをやるんだ!」という若さ、甘さがあるキラキラ✨ボーイなのですが、幾多の歴史的事件や、人の心の裏を知り、だんだんと変わっていきます。
もともとの優しさが薄れていくことも感じながら、それでも苦しみながらも優しさを残して、上り詰めていく男をよく演じていらしたと思います。
原作では春児が主役だそうなので、やはり、一歩抑えたような、いわゆる紳士的な役で、キラキラからギラギラへの変化はなく、咲ちゃんも演りづらかったかもしれません。
しかしながら、同じような衣装が並ぶ中での、一人だけ際立った抜群のスタイルの良さ、そして人柄の良さ、豪華なセットに負けないオーラで、この話題作を代表作にされたと思いました。
李玲玲:朝月 希和
リィ リンリン。鈴か(違)。李春児の妹で、文秀のことを慕っている娘。
この公演で退団なのに…この役は気の毒すぎる…。
なにせ、主役と結ばれないうえに、気持ちや人生がほとんど描かれないんですよね…。
もうどうせ主役と結ばれないなら、後述の西太后に挑戦してもよかったのでは?と個人的に思うくらい。
ひらめちゃん、相次ぐ組替えで紆余曲折あって、雪組トップ娘役になったのに、なんとなく、ニンに合わないお役が続いてお気の毒でした😢
花組時代の『はいからさんが通る』の吉次姐さんや、先日の『夢介千両みやげ』のお銀姐さんみたいな、サバサバッとしてるけど、実は心優しい姉御肌さんとか合ってたと思うんだけどなぁ。
第二の人生も、お幸せでありますよう。
李春児:朝美 絢
リィ チュンル。原作では主人公の春児、「糞拾いの少年」って書いてありました😢
(宝塚では「貧民の少年」。そりゃそうよね。あんな美しい人が糞拾ってたら、オジサン泣いちゃうよ。オジサンじゃないけど。しかもサラリと宦官とか衝撃発言もあるし)
実は『蒼穹の昴』タイトルロールの昴なのでは、と思います。
野心だけを胸に、手段を択ばず翔け上がってゆく、瞳をキラキラさせた純粋な少年。
♪なんせこの顔、この器量♪(by夢介)なので、汚い身なりから、宮中の華のような美青年まで、すべて似合う!
堂々たる二番手ぶりで、ラスト近く、あっと驚くセットの中で一人駆けてくるあーさには、2階客席からも、ある種の良い予感を感じざるを得ませんでした。
代表作になると思うのですが、個人的には、いつかもっと「美」を武器に、したたかに、ずる賢く、そして破滅していくような役が観たいなあ。
順桂:和希 そら
シュンコイ、と読むそうです。
文秀さんの同期、熾烈な試験(科挙)をスイスイと通ってきた、腹に一物ありそうなド秀才。
(全くの個人的感想ですが、漫画『有閑倶楽部』の菊正宗清四郎を思い出しました)
宙組でも、稀有な存在感をきらめかせていたそらぴ、雪組でも輝いていて、オジサンはうれしいよ(だからオジサンじゃないけど)。
歌もダンスも演技もうまい三拍子そろった方。
順桂は、なんの苦もなく演じていて、「そこに居る」という存在感でした。
それと、フィナーレ"歌唱指導"のキラキラ感✨もすごかったなぁ。
宙組をよく観ている者としては、「そらぴのキラキラを見てくださいっっ!!上手いでしょう!!」と自慢したいくらいでした。
光緒帝:縣 千
『ラストエンペラー』(宝塚では『紫禁城の落日』)・愛新覚羅溥儀のひとつ前の若き皇帝。
西太后の傀儡政権で、さまざまな人の思惑に振り回され、翻弄され、責任を押しつけられるような生き様だったのでしょう。
(『エリザベート』の♪皇帝は自分のためにあらず♪というフランツと、皇太子でありながら革命を選んだルドルフ、両方を思い起こさせました)
あがちんは、それらの屈託も、不安も、すべて吹き飛ばすような、若さとエネルギー溢れる皇帝で、幕開き近く、大階段にしつらえられた登場シーンは息をのむほどでした。
ベテラン専科勢
今回、最多か?と思うほどの専科様たちの出演です。
舞台をピリッとしめてくださってます。
李鴻章:凪七 瑠海…出てきただけで場を支配するような存在感は、さすが、真ん中も脇も経験したカチャ。貫禄です。
白太太: 京 三紗…よく考えると、この人の勝手な予言から物語が始まってしまう、罪作りな占い師。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の歩き巫女・大竹しのぶみたいなもんかと。物語の鍵を実は握っているんですね。
伊藤博文:汝鳥 伶…お札から出てきたようなユーちゃんさんの伊藤博文。ユーちゃんさんは、専科になってからも常に前進しているような方だと思うので、安心して見ていられます。幕開きの居酒屋のおやじっぽいのも、ユーちゃんさんですよね。
西太后:一樹 千尋…間違いなく、『蒼穹の昴』に出てくる実在の人物の中ではもっとも有名で、世界三大悪女の一人ともいわれる西太后。でもヒロさんは、悪女なだけでなく、脆い面もあり、そして人間として息づいている西太后を演じてくれました。
楊喜楨:夏美 よう…2階から観ていて、オペラグラスで観る前に、声で「ハッチさんだ」とわかってしまいました(笑)。ほぼほぼ「これきっとワルイヒト」とすぐわかる感じ、いいですねぇー!
栄禄:悠真 倫…よい人役を演じることも多いまりんさんですが、ここはやはり「あの人もなんかある。ワルイヒト」とわかるお役。きっと、役作りに入るとそのような空気ができちゃうのでしょうね。
気になった人々
下級生まで全員はわからない雪組さんなのですが、一度の観劇で「これは!」と思った方々は…
安徳海:天月 翼…いや、もう、どこの専科さんかと! 盲目の胡弓弾きさんなのですが、悲しみ感がすごい! そして、キャトルにはおじいさんの四つ切スチールが。振り切ってて、役に没頭していて、尊敬です。
黒牡丹:眞ノ宮 るい…春児のお師匠さんとなり、壮絶な最期を遂げる黒牡丹。いや。めちゃくちゃかっこいい! これ、代表作のひとつになるんじゃないですか。
まのみやくんは、私は『ファントム』の従者で知ったのですが、憂いのある雰囲気、軽やかなダンスが大好きです。
王逸:一禾 あお…すんごいいい役です。常にトップ、三番手と一緒にいるし、目立たざるを得ません。一幕は「誰だ?てか役名なんだ?」ばっかり気になってしまった(汗)。
そして、華世 京(劉光第)くん、叶 ゆうり(醇親王)くんの美しさ、諏訪 さき(譚嗣同)くんの上手さも光っていました。
しかし…
宙組『Never Say Good Bye』の楽から、『夢介千両みやげ』の初日(コロナのため延期)を観た時も「これが同じ劇場か!! 圧が全然違う!!」と震撼したのですが、『ハイロー』から『蒼穹』の空気感の違いも相当でした。
同じ空間で、まったく違うものを次々に魅せてくれる宝塚…恐ろしい子!!(白目)
私は、今年は『蒼穹の昴』がナマ観劇ラストかもしれません。
今年のシメに重厚で壮大な舞台をありがとうございました!
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DVD/Blu-rayでもぜひ復習を!