Rêve TAKARAZUKA REVUE 宝塚ブログ・タカラヅカの夢 

初演ベルばら以来のファンが公演感想、OG、その他、宝塚を語ります!

月組『ブラックジャック 危険な賭け/FULL SWING!』再演という名の危険な賭け

寒くなってきましたね、皆様。しかしココロは熱く、雪組『蒼穹の昴』から間髪入れず、月組全国ツアー公演、独断と偏見と宝塚愛の混じった感想です。

 

ミュージカル・ロマン

ブラック・ジャック 危険な賭け』

─手塚治虫原作「ブラック・ジャック」より─
作・演出/正塚 晴彦

ジャズ・オマージュ

『FULL SWING!』

作・演出/三木 章雄

 

でももうこれは本当に、独断偏見以外に私情が入りまくること、お許しください。

なぜなら私は、1994年初演『ブラック・ジャック 危険な賭け』当時、花組トップ・二番手のヤンミキこと安寿ミラさん・真矢みきさん(当時ひらがな)が大っっっ好きで、特にミキさんが生活のすべてっていうくらいになっていまして💦

原作の手塚治虫先生も幼少時から大好きで、この初演にあわせてできた手塚治虫記念館にも何度も訪れ、ブラック・ジャックは文庫コミックスでそろえていました。

 

これはチャンピオンコミックス↑

 

先に初演のことを書いてしまいますが、もう少々おつきあいください。

初演『ブラック・ジャック』は、大劇場公演ではヤンさん主演、ロンドン公演のため東京宝塚劇場ではミキさん主演(ラスト3日間だけヤンさん)というスゴイことが行われていたんですよね。

ヤンさんだけ戻るんじゃないですよ、ロンドン公演参加者みんなですよ。

要するにトップ娘役・森奈みはるちゃんや組長・未沙のえるさんたちごくごく一部以外は総入れ替えです。

 

こんなこと今あったら、びっくりじゃないですか?

例えば『HiGH&LOW』で、コブラはムラではゆりかさん、東京ではキキちゃん、達磨の日向はムラではもえこちゃん、東京ではこってい、但し、最後の3日は戻ります…って。ないわー。NO,NICE WORK(ノー、ないわー)!

 

そして、今だから言えますが、初日前の舞台稽古の最中で、ミキさんは救急車で盲腸のため病院へ…。もちろん手術はしないで、翌日の初日を迎えました。

また、ラスト4日前も、翌日からヤンさんバージョンなのに、2回公演で、そのあとに23時まで舞台稽古!! 翌日11時公演!

(23時の出に黒髪だったミキさんが、翌日の9時の入りに金髪だったことは忘れられません…)

 

まあ、内容ももちろんのこと、東京公演なんてほぼ毎日通った、本当に私自身には

特別な公演だったんですよね。

 

初演BJは…

ヤンさんバージョン…クールな外見、シニカル、しかし実は誰よりも「生と死」に対して熱い心を持っている。懸命に生きようとした人を知っている、そして懸命に命を助けているからこそ、生きようとしない人がキライ。

もしかしてヤンさん自身もそうかもですが、BJしかり『ベルばら』のオスカルもしかり「一見氷のように冷ややかなくせに…胸の中はまるで炎のように燃えさかっている…」(byアンドレ)という感じなんですね。

ミキちゃんバージョン…実は漫画のBJ、見かけほどクールじゃなくて情熱的。そして冷たい人ではなく、人情家でもあります。ミキちゃんのBJは、漫画により近く情熱的で人情家。そこに(たぶん代役であることも含め)ものすごい緊張感と、「生と死」に対する緊迫感、生き物に対する愛おしさが加わっていました。

そこに、ヤンさんバージョンの場合は、二番手・ケイン(ミキちゃん)とのシーンに、なんともいえない空気感が生まれるんですよね。

特に銀橋での掛け合い、なげやりで厭世観を持つケインに、生きる意味を問うBJ。

ラスト、生きる意味と「♪苦しみでもかなしみでも、ひとは誰も生きていたい♪」ことがわかったケインと、それに安堵して(照れてか疲れてか)寝てしまうBJ。

もう、この空気感最高です。

なんだろう…「ヤンミキなら絶対安心」という安定感と、「こんなにギリギリまで舞台に命を賭けて、ヤンミキ大丈夫かな」という緊迫感、それが相乗効果で2倍3倍になって劇場を支配する…というすごさがありました。

まさに陰陽、太陽と月、氷と炎…(これがまた、ヤンさんが氷で…とかではなく、どっちも、どっちの要素も実は持っているんです)

 

ちょっとヤンミキ話長くなってすみません。

とにかく、初演ファンは、こーゆー気持ちで観ている人もいたということで。

 

 

だもんで、月組公演もぜひぜひぜひぜひ観たく、やっとチケット手に入れたのですが…

なななななんと、私自身が2日前の夜中に救急搬送!! 緊急入院!!トイレも行けない!! 市川なんて行けるわけがない!! マジで助けて、BJ先生!!😢

 

幸い、快復が早く、退院が配信に間に合い、それで拝見することができました。

(ちなみに…配信のあった、福岡市民会館、昨年の全く同時期に宙組全ツで行きました。その前に行ったのは、25年前、ヤンミキの『心の旅路/ファンシータッチ』でしたw)

 

 

さて配信で観ての感想です。(ショーのことも書きます)

 

ブラック・ジャック:月城かなと

さんざん上記にヤンミキBJのことを書きましたが…。れーこさんは、また2人と違ったBJでした。

顔の傷と、そこから色が変わっているメイク(これ、実は原作で、黒人とのハーフの少年の肌を移植したからなのです。BJは少年を忘れないよう、この肌の色をあえて残しています)、半分以上白髪になっている髪など、ヤンミキ時代より原作漫画に近づけたビジュアル。

ぶっきらぼう。達観。諦念。忘れかけていた過去の自分の思い。それでも、かわらぬ思い。

れーこさんのBJは、少し大人な、でも熱い思いを忘れてはいないようなBJだと思いました。

あ。れーこさんのせいではないですが、でも白いマフラーはいただけなかったかな。
BJって原作でも初演でも黒マフラーが多いと思います。

 

初演のことをさんざん書きましたが、れーこさんって、「過去ファンの亡霊が思い入れがありすぎる作品」が回ってくること多いような。

ダル・レークの恋』『川霧の橋』『グレート・ギャツビー』…

今夜、ロマンス劇場で』は映画でしたが、すぐに比較できるような対象があって。

そういう思い入れを受け入れつつ、自分なりの新しい役作りができるのがすごいなと思います。

できれば、れーこさんオリジナルの本公演が観たいけれど、彼女の真骨頂は、颯爽たる美貌とはちょっと違った、ぶっきらぼうで、なかなか自分の気持ちを伝えられない男…なのかもしれませんね。

私個人的には、れーこさんは、全然違うけれど、『るろうに剣心』の蒼紫と、『川霧の橋』の幸次郎が好きだったので、藤沢周平の江戸物とかいいかも…と思っております。

 

ショーでは、本公演と変わらず、まさに「」。

あの、でも、差し替えになった「マイ・ウェイ」は、私個人の世代的に、「ちょっとカンチガイしたオッサンが歌う歌」と認識しているので💦、変わってよかったな…と。

 

アイリス/如月 恵:海乃 美月

アイリスはケインの元恋人で、MI6に籍を置く中尉。

如月恵は回想の中に出てくる、BJの元恋人の医者。

どちらもとても自立した女性です。

 

これもね…すみません、初演時の森奈みはるちゃんが大好きだったので、アレなのですが…みはるちゃんは、ベビーフェイスでふんわかかわいいタイプだったのですが、セリフも歌も、声が鈴を転がすような声だったので、このような自立した女性もうまく演じていたと思います。

うみちゃんの二役、ちょっとみはるちゃんを意識しつつ、とても自立したしっかりした女性に見えたのですが。もしかして、ちょっとしっかりしすぎたかも。

特に、アイリスの鬘は、初演と同じく、とても直線的な横分けボブですが、コレ、丸顔でベビーフェイスのみはるちゃんが、大人っぽく見せようとした結果だと思うんですよ。

うみちゃんの場合、もともと美人顔なので「恋愛に興味のない仕事一筋のしっかり者」に見えてしまった。

如月恵も、回想ですが、若手である・ブラックジャックの影(一輝 翔琉)と絡むので、もう少し若くてもよいかなーと。

初演ビジュアルにこだわらず、自分の役作りでよかったかもしれませんね。

でも、叫ぶシーンがギャーギャー聞こえず、しっとりした女性だったのはさすがでした。

 

ショーでも、堂々たるトップ娘役ですが、こちらは、美人顔を活かして、ひっつめ系の髪型がよかったのでは?

 

ケイン:風間 柚乃

元MI6で、ある事件がきっかけで、頭に銃弾の破片が残っている(盲管銃創)。ブックメイカー(投資家)で、実はスパイのような動きもしている青年。盲管銃創により、「いつ死んでもいい、どうでもいい」という厭世観を持っているが、友人を助けるために、事件に深くかかわることとなる…。

 

なんか、もしかして、今回、BJとアイリスが初演より大人っぽいので、ケインも大人の設定なのでしょうか。

実年齢や見た目でいうと、初演のミキちゃんのほうが年上だと思うのですが、衣装などは今回のおだちんのほうが大人っぽくしてありました。

 

芝居巧者のおだちん、何かすごくストレスを抱えながら、自己解決してしまっているような、見た目通り大人なケインでした。

初演ミキちゃんは、何かすごく精神的にも子供っぽく、なんなら同期か後輩くらいのアイリスにも精神的に追いつけていないケインが、悩み苦しんで、ラストに生きる意味を知り、愛を知り、大人になる…という盛りだくさんケインだったように感じてました。

おだちんは、生きる意味も愛も、どうでもいいまま、すでに大人になっていて、最後に生きる意味を知った…という感じ。

 

ラスト近くの、BJとケインがベンチにいるシーンは、良い悪いでなく、これはほんと仕方ないのですが、ヤンミキの空気感とは全然違ったかも。

 

でもおだちんこそ、若手のころから代役が回ってくることが多く、また比較されることも多く、ストレスが多かったと思います。

「これぞおだちん!」というようなオリジナルの役が回ってきますこと、楽しみにしています。(私が今までで一番好きなおだちんは、『ピガール狂騒曲』のボリスです)

 

ジョイ:礼華 はる

爆上げ…といってよいのでしょう、ぱるくん。

ジョイは、ちょっとお調子者で、でも友達思いでもあるのですが、イマドキ風に難なく演じていました。

(初演は、愛華みれさん・タモと、匠ひびきさん・チャーリー。タモのお調子者感は毎回面白かったです)

 

ショーも、ありちゃん(暁千星)のシーンがぱるくんメインシーンになり、しかもヤンミキファンの心をくすぐる「ラ・コンパルサ」じゃないですか!!

 

正直、芝居もショーも、まだまだ粗削りなところがあり、本公演でも、ビジュアルはすごく目立つのに、あまり役作りしていないのかな?という部分があり…。

月組は、れーこさんはじめ、ちなちゃん(鳳月杏)、おだちんと、ビジュアルも芝居心も満点という男役さんがそろっているので、しっかり学んで、伸びていってほしいです。

気になった方々

ブラック・ジャックの影:一輝 翔琉……これまた爆上げと噂のわかさま。本公演では、ブラック・ジャックの影は、セリの上など、ちょっと離れたところにいるのですが、全ツだから、もう本当の影のようにすぐ後ろに。そりゃ目立つわ。

でも、なんでしょうね…。いくら影とはいえ、ちょっと無表情すぎやしませんか。(演出だったらスミマセン)

ブラックジャックのれーこさんが、さまざまな表情を作っているので、その心情を投影した感じにしてほしかった。特に、如月恵とのくだりは、通りすがりの人かと思うほどでした。

まだまだ研2だし、これからだと思うので、今後頑張ってほしいです!

ベリンダ:結愛 かれん……ダンサー好きの友人がこぞって推してるゆいちゃん。セクシーなダンスはもちろんですが、お芝居もうまいんだなと思いました。かわいい系なのにキリッとしていて、今回の役のお顔は、ちょっとダンちゃん(檀れい)を思い起こさせました。

ピノコ美海 そら……出番の割には、圧倒的なキャラクター性ですごくお得なピノコ。BJ先生が唯一、心からの笑顔を見せる相手でもあります。とてもかわいく演じていらっしゃいました。

 

正塚先生の演出

初演当時の宝塚は、まだまだ植田先生や柴田先生といった大ベテラン演出家両巨頭もいらして、正塚先生・小池先生が、新時代の両若手…という感じでした。

私は当時、正塚先生のレジスタンスなところというよりは、「生きる意味」を問う作風が好きでした。

皆、つらく、もがき苦しんでいても、ただ生きることに意味があるのだ、と。

命は、何にも代えがたい尊いものなのだと。

そんな正塚先生のメッセージが、『テンダーグリーン』の主題歌「心の翼」と、この『ブラック・ジャック 危険な賭け』にいちばん色濃く出ているのでは、と勝手に考えています。

 

初演とどうしても比較してしまったりしますし、原作もあまりにも有名で、今回の再演、本当に「危険な賭け」だったと思います。

でも、コロナ禍で、皆の気持ちが抑圧されていたり、命の尊さを考え直したりしている今、この作品をやることで、命の意味をもう一度思うことが大切かもですね。

危険な賭け、成功だったと私は思います。

 

(二人だけの戦場も危険な賭けなような…ごにょごにょ)

 

www.tca-pictures.net

初演BJが観たい方は、ときどきやるので、スカステで!
(でも、ミキちゃんバージョンはないです…ほんとマボロシー😢)